2016年2月25日

私の歩んで来た道（28）

私が就職した会社は「大手町ビル」にあった。私は会社は都電で通えというが、南麻布の家から地下鉄で通うことにした。その頃我が家にも新しい事態が起きた。
父がスペイン大使を退任し、日本に帰って来た。新しい職場は外務省の研修所の所長であった。
母は父の退職金で南麻布に小さな建売りを買った。六本木の家は人に貸して南麻布の家に集った。
但し例外は姉の綏子である。綏子は米国人アーニー・シュレンツェル氏に親の反対を押し切って結婚した。

弟の達は首尾よく東大に合格していた。
従って南麻布の家には両親、私、弟の達、妹の文子の5人暮らしであった。
父は外務省の役人としての最後の仕事をやっていたのだが、運命は変わった。
東京オリンピックを目前にひかえ、組織委員会の会長、事務総長が対立し二人とも辞任という考えられないような事件が発生した。引き受け手はなかなかいない。その中で父を事務総長にとの声が上がり、大平外務大臣より直々就任してくれという要請もあり、外務省をやめて、東京五輪組織委員会の事務総長になった。

その当時組織委員会は今の迎賓館にあった。弟は大学通い、妹は小山台高校、私は会社員。
しかし組織委員会の会長はなかなか決まらなかった。
私の就職した会社、日本原子力発電㈱の会長は安川第五郎氏（安川電機の創立者）であった。
ある時父と雑談をした時、安川さんのことが話題になった。父は「石坂泰三」さんと会長人事を相談してみよう。石坂さんはその場で「それはいい、自分の親友でもある」と言って安川さんを口説き、会長に就任して頂いた。
ようやく体制が整い、オリンピック準備がスタートした。