政策
2016年5月12日
政策雑感(21)
ある人から安倍内閣の経済に関する政策は成功か失敗かと訊ねられたので、次のように答えておいた。
① アベノミックスなどというスローガンは幻の政策であって、スローガン止まりである。
(こんな名前を付けたこと自体が大変おこがましい。こんなことをG7で吹聴してもらっても困る)
② しかし安倍内閣は次の点は高く評価されるべきである。
- いろいろな統計から雇用は完全雇用といえるレベルまできている。
- 人が足りない。求人に対して求職は求人の方が多い。
すなわち有効求人倍率は1をはるかに超えている。 - 但し、雇用形態は非正規が多くなっているようであり、決して健全とはいえない。
- 但し、安倍首相が唱えている「同一労働、同一賃金」という考え方は大変立派であって、是非この思想が経済界に浸透していって欲しいし、厚生労働省も自分の責任として努力すべきである。
- 私が心配しているのは、非正規の方々の賃金だけでなくこの立場にいる人の厚生年金、健康保険である。資本家は人を安く使うことが当たり前というところがあるので、政府はこの面での格差も解消するよう努力すべきである。
- 熊本の災害対策は「会議は踊る」では困る。やはり着実に一歩一歩、各省が自分の範囲で全力をあげるべきである。
- 日銀の金融政策は失敗である。全部日銀の責任ではなく海外の要因もある。
80兆円もの「お札」を毎年プリントしているのは異常である。
これは日銀のバランスシートを痛めるだけではなく、次のような副作用をもつ。 - 政治はどんどんお金が湧き出すので、財政の健全化を忘れる。
あるいは知っていても知らんぷりをする。 - 偽札まがいのお金が流通するのであるから、国民の健全な金融資産の価値は薄まっていく。
- お札印刷機で作るお金は言わば「インフレの種まき」をしている事であり、政治も国民もこの事を気が付くべきである。
- 物価が2%上がるのが目標である。
それが「デフレ脱却」だというが、生活者にとっては物価が上がるということは良いことではない。1929年の大恐慌は30%以上下落、失業率も50%前後までいったのであり、このような悲惨な状況を初めてデフレという。 - ゼロ金利政策の悲劇
- 一生かかって貯めたお金に利息がつかない。
- 設備投資が増えるかといえばそんなことは起こらない。
理由は次の通りである- 銀行は相変わらず危ないところにはお金を貸さない。
- 仮に会社が設備投資をするかといえば、そうであっても内部留保という手金を持っているし、社債等の調達手段も持っている。
- 経営者が新規の設備投資を考えるのは次の3つのケースである。
・需要が確実に見込める時
・新しい技術革新(イノベーション)が起きた時
・設備が古くなりすぎた時 - 個人で恩恵を受けるのは、住宅ローンを組んでいる人位だと考える。
一般の人は自分の稼いだお金で貯めたお金に利息が全然付かない。
(莫大な額の所得移転が個人から企業(銀行を含む)に起きている)
【参考】
物価はなぜ上がらないか、ひとつだけ理由をあげよう。
それはグローバリゼーションによって賃金の安い国が作る製品が安くなり、これに競合する日本の物も安くならざるを得ない。
【結語】
安倍総理にお考え戴きたいのは、これから100年200年日本が存続していくための日本の基礎体力作りである。
これは教育に始まって社会的寛容、基礎研究、大学の充実等様々なことがある。
成長政策なるものはここ2〜3年の話ではない。
これから長い将来に亘って、国民の生活が高いレベルで続くための施策、これを総理にはやって戴きたい。